「安定した独裁国家」か「混乱した民主主義国家」か


渡部恒雄『二〇二五年 米中逆転――歴史が教える米中関係の真実』(PHP研究所、2011年)より引用。

中国は、日本、台湾、インドネシアとは違い、経済だけでなく、政治的にも米国の影響を大きく受ける同盟国ではない。すでに米国の民主化要求を撥ね返すだけの経済力と軍事力をもちつつある。今後は、米中は民主化をめぐり、未知の難しいステージに入っていくと予想される。(199頁)

そのようななかで、日本と日本のリーダーは、民主化と人権をめぐる西洋と東洋の歴史を十分に学んでいるだろうか。そして、安定した独裁国家がいいのか、混乱する可能性のある民主主義国家がいいのかという中国の将来をめぐる難問に、どのぐらい有効な提言を示せるだろうか。日本の知識人は、歴史と社会が抱えるこのような難問に対して、どれぐらい問題の本質に迫る根源的なアプローチをしているのだろうか。そして中国やアジア諸国、欧米の知識人と議論の共有を行なっているのだろうか。本来ならば、これらの課題は、非西洋の先進民主主義国である日本だからこそリードできる課題なのだ。これは迂遠なようでいて、日本が米中関係に影響を与えることができる重要な分野である。(199-200頁)