アベノミクス 「成功モデル」か中国が注視(朝日新聞)

吉岡桂子「アベノミクス 「成功モデル」か中国が注視」(朝日新聞2013年3月26日)より

中国が安倍政権の経済政策「アベノミクス」のゆくえに目をこらしている。中国語訳はそのものずばり「安倍経済学」。中国でよく使われる検索エンジン百度(Baidu)で入力すると、200万を超える件数になった。

輸出競争力を回復させるため、円安を誘導しようと金融緩和を加速させたという「通貨安競争」批判もあるが、実は表向きのものだ。中国自身も人民元相場を管理し、経済の実力より安く据え置いていると指摘されている。つつけば、火の粉が飛んでくる。

むしろ、もっと我が身に照らして考えている。大胆な金融緩和や積極的な財政出動による公共事業の効果に頼って、経済は長期的な回復軌道に乗るのだろうか、と。

中国は改革開放以来、日本の経済政策を徹底的に研究してきた。経済学界の重鎮として政府にも影響力を持つ呉敬●(ウーチンリエン、●は王へんに連)氏は、視察した国でもっとも深い印象を受けたのは「市場経済を標榜しながらも、政府が行政指導を巧みに使って高度成長を成し遂げた日本だった」と語っていた。米国とは異なる道筋で世界第2の経済大国になったとの認識だ。

輝いていた日本経済のバブル崩壊後の低迷の総括は、こうだ。日本は働き手としても消費者としても現役世代の数が減り始めたにもかかわらず、政府は売れなくなった商品をつくる産業を保護したり、むだな公共事業にお金を使ったりしてしまった。もっと新しい成長産業を生み出す方向にかじを切り、働き手ひとりひとりの生産効率をあげるべきだった、と。