「娯楽」を「生きがい」にする人たち

永井均小泉義之『なぜ人を殺してはいけないのか?』河出書房新社、1998年

「ジャーナリズムで取り上げられる事件やそれをめぐる言説は、多くの一般人にとって異次元の出来事であり、はっきり言ってすべて娯楽にすぎない。

 一方、新聞・雑誌が構成する事件空間や価値空間こそが真の世界だと信じて、その実存性を疑わずにその中で生きて行く人たちもいる。そういう世界の中で憤慨してみたり、戦闘的なそぶりを見せたりする。一種の芸なのだろう、と思うのだが、どうもそうとばかりはいえず、本気でそういう世界の中で生きてしまう人もいるらしい。むしろ一種の宗教なのかもしれない。たしかに、中にいる人はけっこう楽しそうだ。たぶん、ある種の生きがいが与えられるにちがいない。」(永井均、p.59)