「法律リテラシー」の必要性(敷金・職質・保証人)

敷金・職質・保証人―知らないあなたがはめられる - 自衛のための「法律リテラシ―」を備えよ - (ワニブックスPLUS新書)

烏賀陽弘道『敷金・職質・保証人――知らないあなたがはめられる 自衛のための「法律リテラシー」を備えよ』ワニブックスPLUS新書、2018年より

「「市民が知らないままでいる」状態ほど、制限のない力の行使を望む人たちに好都合な環境はありません。」(p.285)

 

「「敷金」で言えば、「敷金は退去時に入居者に返すのが原則」と借り主が知らないでいてくれる方が、貸主にはお金が入る。「職質」で言えば、市民が「職質を断っても法律違反ではない」「裁判所の令状がない限り、身体検査やカバン検査は断れる」「警察署に行く義務もない」と知らないでいてくれる方が、職務質問はスムーズにはかどり、警察の摘発数(=評価対象になる業績)は増えます。「警察官が作った供述調書に署名・捺印すると、もう撤回できない」ということを知っていれば、署名・捺印を拒否する市民が増えることでしょう。しかし、それは警察にとっては「業務がやりにくくなる要因」でしかありません。貸主にせよ警察官にせよ、相手が無知で、何事もハイハイと自分の言う通りに従ってくれるに越したことはないのです。」(pp.285-286)

 

「そうした人々には「できるだけ市民は知らずにいてほしい」と願う動機が生まれます。文字通りにそう意識していなくても、真面目に職務を遂行しようとすればするほど、妨害要因を排除したいという動機を捨てることはできません。少なくとも、積極的には相手に告知しないでしょう。つまり現代日本では「無知は利用される」のです。」(p.286)