「太平洋戦争開戦直前の日米戦力比は1対10」

あの戦争は何だったのか: 大人のための歴史教科書 (新潮新書)

「太平洋戦争開戦直前の日米の戦力比は、陸軍省戦備課が内々に試算すると、その総合力は何と一対一〇であったという。米国を相手に戦争をするに当って、首相、陸相東條英機が、その国力差、戦力比の分析に、いかに甘い考えを持っていたかが今では明らかになっている。

「一対一〇」という数字自体もだいぶ身びいきがなされて出された数字だったが、データをもとに軍事課では、戦争開始以降の日本の潜在的な国力、また太平洋にすぐに動員できる地の利も考慮すれば、「一対四」が妥当な数字だと判断し、改めて東條に報告がなされた。東條はその数字を、「物理的な戦力比が一対四なら、日本は人の精神力で勝っているはずだから、五分五分で戦える」、そう結論づけてしまった……。」(p.55)