「苦」に弱い現代社会
「真に豊かな社会とは、「これだけ豊かになったのだからこの程度の「苦」ではびくともしないよ」と胸を張れる社会であろう。
ところが、私たちは到底そう思えない。それどころか、「苦」に直面した中高年は若者と同じく、自分のことを「犠牲者」であり「被害者」だと思ってしまう。もっとも、その認知は必ずしも思い込みだけだとは言えないのかもしれない。「犠牲者」に対しては誰も手を差しのべようとはしないし、社会からは実際に「犠牲者」であるかのように扱われるからである。
これだけ豊かであるにもかかわらず、自分のことを「被害者」だと思わされてしまう社会。自分のことを「犠牲者」だと思わされてしまう社会。そんな社会が「生きる意味」において豊かな社会でないことは火を見るよりも明らかであろう。」(p.12)