金融審議会の報告書を読んでみた

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603.html

  先日の国会でも論争を引き起こすことになった金融審議会「市場ワーキング・グループ」の報告書。約50ページに及ぶこの文書を読んでみたが、自分のような金融の素人にも大変わかりやすい言葉で書かれており、少なくとも「誤解を招く」ような箇所は一つもなかった。むしろ、これから大変な時代を迎える日本人に対して、元気な現役時代のうちから少しでも早めに備えをと訴える姿勢には誠実さが感じられた。

 例えば、結論部分の以下の箇所は、困難に直面することが予想される我々全員に対して寄り添ってくれているように感じられた。

「日本人は長生きするようになった。さらに、現在の高齢者は昔に比べて格段に元気であり、社会で活躍し続けている。これ自体は素晴らしいことであり、多くの人にとっても、社会全体にとっても望ましいことである。しかしながら、寿命が延び活動し続けるということは、それだけお金がかかるということを意味する。余暇活動を楽しむなど心豊かな老後を楽しむには、健康と同様にお金も重要である。長寿化に応じて資産寿命を延ばすことが重要であり、この観点から、ライフステージ別に知っておくことが望ましい事柄をこれまで紹介してきた」(p.35)

 

「特に2025年は、いわゆる団塊の世代が75歳を迎える年とされる。75歳を超えたあたりから認知症有病率は大きく上昇するとされており、今から準備を始めることが重要と考えられる。認知能力・判断能力の低下は誰にでも起こりうるという認識の下、これに備え、対応することは、本人にとってこれまでと同じ形で金融サービスを受けるという意味で必要であり、家族など周囲の者を混乱させないという意味でも非常に重要である」(同上)

 政府・与党サイドから批判されたのは、以下の箇所である。

「老後の生活においては年金などの収入で足らざる部分は、当然保有する金融資産から取り崩していくこととなる。65歳時点における金融資産の平均保有状況は、夫婦世帯、単身世帯、単身女性のそれぞれで、2,252万円、1,552万円、1,506万円となっている。なお、住宅ローン等の負債を抱えている者もおり、そうした場合はネットの金融資産で見ることが重要である」(p.16)

 

「収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20年で約1,300万円、30年で約2,000万円の取崩しが必要になる」(同上)

  多くの人が直感的にわかっていることを簡潔に書いてくれているように自分には感じられた。

  自分にとって一番ショッキングだったのは、以下の箇所であった。

「なお、米国では75歳以上の高齢世帯の金融資産はここ20年ほどで3倍ほどに伸びている一方、わが国の同年代の高齢世帯の金融資産はほぼ横ばいで推移しており、対照的な動きとなっている。米国では、市況が好調だったことに加え、401(k)プラン等の制度的な後押しもあり、現役期から資産形成を実行し且つ継続するとともに、そのような世代が歳を重ねるに従い、高齢世帯の資産が増加していったと推察される」(p.17)

  米国ではみじめな思いをしながら老後を送る必要がなく、豊かで充実したセカンド・ライフを楽しむことができる。ロバート・キヨサキの『金持ち父さん貧乏父さん』ではないけれど、やっぱり金融についての基礎的な教育は、日本でも小さい頃からある程度は必要ではないかと感じる。