高校の教育と大学の教育の違い

知の技法: 東京大学教養学部「基礎演習」テキスト

小林康夫船曳建夫編『知の技法』東京大学出版会、1994年より。

 

高校までの教育はあくまで、知る者が知らない者に知識とその獲得の方法を与えるという、関係の不均衡と能力の落差が前提でした。しかし大学での教育は、教師と学生が同等に立つことを目標とし、同時に最初からそれが実現されているとの仮設の枠組みで「教育」を行うため、その二者のあいだで、また大学を超えた社会に対して、知の行為者としての倫理が要求されるのです。(p.2)

 

教師の言は、学生に対し、反証することが可能なように開かれていなければならないのです。いわば、大学はそこで落差をもとにした教育が不可能になる地点まで教育を行わねばならないという、教育者にとっては自らが「消え去る」ことが願いであるという不思議な場であるのです。同様に、そこで、学生の言もそのように他者に開かれていることが必要なのです。(p.2)