コロナ封じ込め失敗の経験が優位性をもたらす?

フォーリン・アフェアーズ・リポート 2021年1月号

フォーリン・アフェアーズ・リポート2021年1月号に掲載されている論稿「ワクチン開発と集団免疫――米中免疫ギャップの意味合い」の中で、米外交問題評議会シニアフェローのヤンゾン・ファン氏は、短期間で国内での感染拡大を封じ込めることに成功した中国ではウィルスにさらされた中国人がほとんどおらず、今後国内での集団免疫を獲得するのに時間がかかるだろうと述べている。

 

さらに、国内での感染例が少ないことを前提に中国が途上国へのワクチン提供を約束していた「ワクチン外交」の思惑は、昨年11月に欧米諸国が大規模ワクチン接種を開始したことで状況が一変したという。感染例が少ない中国において集団免疫を獲得する手段はワクチン接種しかないため、国内需要を満たすことを優先せざるを得なくなると予想されるからだ。

 

集団免疫獲得の遅れ(「免疫ギャップ」)のせいで中国が困難に直面するならば、民主主義国よりも権威主義国の方がパンデミックにうまく対処できるという議論はもはや通じなくなり、「むしろリベラルな民主主義国家のレジリエンス(復元力)、大きな危機に直面したときの自己修正能力が評価されるようになるかも知れない」とファン氏が論じている点が非常に興味深かった。

 

歴史をひもとけば、「免疫ギャップ」が力関係を決定づける要因になることは明らかである。ファン氏は、天然痘の集団免疫をほとんどの成人がもっていたスペインの征服者たちは、アメリカ大陸にこのウイルスを持ち込んだ時、免疫を持っていないネイティブアメリカンの人口を95%も減少させたと述べている。