鶴見俊輔編『本と私』(岩波新書、2003年)書評
- 作者: 鶴見俊輔
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2003/11/20
- メディア: 新書
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編者の鶴見俊輔は、「年配の人の場合、自分が今まで自分をつくるについて頼りにしてきた本には、終わりが来ているのではないか、という不安があり、これから育ってくる人たちと、自分は、どう結びついてゆくのかという問題がある」(1頁)と言う。現代に生きる若者たちの情報入手経路が多様化していることは確かで、その中に占める本の比重がますます低下していることも事実だろう。しかし、本には他の情報メディアでは代替できない要素がたくさんあり、また情報入手の効率性について意識的な若者は、必ず読書という情報獲得手段についても真剣に考えているはずだと思う。出版業界が抱える構造的な問題が本の質に及ぼす影響は深刻だが、本という文化の将来については必要以上に悲観する必要はないのではないだろうか。