2019-05-01から1ヶ月間の記事一覧

「芸術至上主義も知と権力の関係から自由ではあり得ない」

「文化の政策的価値を「不純」なものとして退ける芸術至上主義的な解釈を私自身は何ら否定しないが、それだけが文化のあるべき姿だとも思わない。さらに言えば、文化の政治性に対する批判的・懐疑的な視点はすこぶる大切だが、同様に、文化の真性性や純粋性…

「領土と歴史認識では相手の挑発的な「柔術」にはまってはならない」

「領土問題に関しては、あくまで「法の支配」の原理原則に基づき、必要とあれば、公明正大に、国際的な枠組みのなかで争うことも厭わない姿勢を示すことが肝要だろう。歴史認識に関しては、同じ国内であっても一致することは難しい。外国との間であれば尚更…

「学生の意見を聞くなんて、プライドがないのか」「僕にその類の「プライド」はありません」

「お金をもらって仕事をしている以上、すべてのビジネスマンはプロフェッショナルです。そのプロフェッショナルが丹精込めた仕事に、お客さんというその道の素人が平気でクレームをつけてくる――。そのとき、プロのプライドは揺らぎます。しかし、そういうと…

教えすぎる先生=考える力を奪ってしまう先生

林修『林修の仕事原論』青春出版社、2014年より。 ※強調は引用者。 「僕は人に本をすすめません。読みたい本は自分で探すべきだというのが持論です。書店でもネットでもあふれるほどの本の情報があるこの時代に、自分が読みたい本を見つけられないというのは…

「欲望が散らかっている人間は、永遠に何も手にすることができない」

青木真也『空気を読んではいけない』幻冬舎、2016年より 「「みんなが食えるような業界になればいい」と格闘技関係者は言うが、逆にそれでは問題だ。勘違いしてほしくないのは、格闘技界は恵まれていないが、食えない業界では決してない。大勢の何も考えてい…

「強制」と「報酬」による問題解決が社会全体のガバナンスコストを増大させる

「途上国や新興国のみならず、先進国においても新自由主義の論理と力学が、従来の社会的な紐帯や信頼を分断し、経済格差や意識格差を拡大し、個人を孤立(原子)化するリスクが顕著になりつつある」(p.51) 「ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)が低減…

「確信を持てなくするのが文化人類学者の仕事」

「為政者の仕事は世界を単純に語ることにあるのかも知れない。それを精査し、批判してゆく営為はもちろん大切だ。「確信を持てるようにするのが他の人たちの仕事、確信を持てなくするのが私たちの仕事です」(『解釈人類学と反=反相対主義』小泉潤二編訳、…

二極化する言説空間

「皮肉な見方をすれば、現在の課題に対して、スーパーモダンの肯定派は歴史的・文化的文脈を無視した強引な変革を迫り、逆に、否定派は歴史や文化を盾にいかなる変革をも拒む傾向がある。また、ポストモダンの肯定派は未来――しかも本当に実在し得るか疑わし…

「ある個人の活躍や能力がすぐに「ユダヤ人」として括られることが問題だ」

渡辺靖『<文化>を捉え直す――カルチュラル・セキュリティの発想』岩波新書、2015年より 「本来、多様な属性を持つ個人を「イスラム教徒」という大きなカテゴリーのみで括ることはフェアなのか。私が日本の大学の学部生だった一九八〇年代半ば、日本ではいわ…

「音楽家は政治になんの貢献もできないが、好奇心の欠如という病に向き合うことはできる」

第8章「文化・スポーツ活動と心の平和構築」(福島安紀子)より (下線は引用者) 「オーケストラ指揮者ダニエル・バレンボイムはイスラエルとパレスチナの和平を願って、ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団を設立し、毎年夏に合宿し、世界各地で公…

文化外交の成果測定の難しさ

「文化活動(文化外交や交流外交)の成果は長期的スパンで評価する必要がある。例えば、アレクサンドル・ヤコブレフが米ソの交換留学生として一九五八年に一年間コロンビア大学に留学したことの成果は、彼がミハイル・ゴルバチョフ政権のナンバー2としてペ…

「人間性という歪んだ材木からは、真直ぐなものはかつて何も作られなかった」

(下線はすべて引用者) 「アマゾンの最深部で一万年以上、独自の文化・風習を守り続けているヤノマミ族。文化人類学の教科書でもしばしば取り上げられる部族だが、NHKはブラジル政府、および部族の長老七名との一〇年近い交渉の末、TV局として初めて長期(…

社会科学の軍事的関与

渡辺靖『文化と外交:パブリック・ディプロマシーの時代』中公新書、2011年より (下線はすべて引用者) 「二〇〇一年の同時多発テロ事件後、アメリカ中央情報局(CIA)は(中略)奨学金制度を通して、文化人類学や地域研究を専攻する学生の確保に乗り出して…

「異文化交流が親しみをもたらすとは限らない」(フルブライト)

渡辺靖『文化と外交:パブリック・ディプロマシーの時代』中公新書、2011年より 「イギリスのローズ奨学金をモデルにフルブライト奨学金を創設したアメリカのJ・ウィリアム・フルブライト上院議員は、一九六一年、アメリカ連邦議会上院で次のように証言して…

博士論文と孤独

「大学院生時代、特に博士後期課程やオーバードクター(博士課程を終えても定職にありつけない状態)の時代に、論文がうまく書けないときなど、同じ世代の友人たちはみんな頑張って働いて、結婚したり子どもをつくったりしているのに、自分はいったい何をし…

「忙しすぎる=スケジュール管理に失敗した証」

「「忙しい」こと、とりわけ忙しすぎることは、決してよいことではなく、スケジュール管理に失敗した証として、むしろ、恥じるべきことなのです」(p.88) 「私はあえて断言しますが、忙しいこと、人づきあいが多いことなどは、どちらかというと“浅い”人生を…

孤独、失恋、離婚

諸富祥彦『孤独であるためのレッスン』NHKブックス、2001年より 「離婚を「夫婦関係がどうしようもなくなった場合の最悪の選択」と考えるのでなく、「運悪く夫婦のマッチングが悪かった場合に、それに固執せず、新たに仕切り直すための前向きな選択」と受け…

「良き反面教師」としての太平洋戦争

保阪正康『あの戦争は何だったのか:大人のための歴史教科書』新潮新書、2005年より (下線は引用者) 「あの戦争では「一億総特攻」とか「国民の血の最後の一滴まで戦う」などといったスローガンが指導者によって叫ばれた。馬鹿なことを言いなさんな、この…

安保論争

細谷雄一『安保論争』ちくま新書、2016年より 「安保関連法に反対する人々は、平和を求めて、戦争に反対している。安保関連法を成立させた安倍政権もまた、同じように、平和を求めて、戦争に反対している。どちらかが間違っているのだろうか。あるいは、どち…

「苦」に弱い現代社会

上田紀行『生きる意味』岩波新書、2005年より 「真に豊かな社会とは、「これだけ豊かになったのだからこの程度の「苦」ではびくともしないよ」と胸を張れる社会であろう。 ところが、私たちは到底そう思えない。それどころか、「苦」に直面した中高年は若者…

仏教の「絶対にごまかしてはならないこと」

魚川祐司『仏教思想のゼロポイント:「悟り」とは何か』新潮社、2015年より 「ゴータマ・ブッダの教えは、現代日本人である私たちにとっても、「人間として正しく生きる道」であり得るのかどうか、ということである。 結論から言えば、そのように彼の教えを…

「プレッシャーのおかげで生きている意味を感じられる」(イチロー)

デイヴィッド・シールズ編『イチローUSA語録』(永井淳/戸田裕之訳)集英社新書、2001年より 「異郷シアトルで暮すことに不安を感じるかときかれて、イチローはこう答えた。 『まだ英語も話せないし、プレッシャーは大きいです。ものの考え方や習慣が違うの…

「太平洋戦争開戦直前の日米戦力比は1対10」

「太平洋戦争開戦直前の日米の戦力比は、陸軍省戦備課が内々に試算すると、その総合力は何と一対一〇であったという。米国を相手に戦争をするに当って、首相、陸相の東條英機が、その国力差、戦力比の分析に、いかに甘い考えを持っていたかが今では明らかに…

近現代史の忘却

保阪正康『あの戦争は何だったのか―大人のための歴史教科書』新潮新書、2005年より (下線はすべて引用者) 「現在、私はある私立大学の社会学部などで講座をもっているのだが、学生たちの多くがほとんど日本の近現代史を知らないことに驚かされる。聞くと、…

「自尊感情の衰退」(小谷敏)

「自分を苦しめている者にストレートに怒りをぶつけることのできる人間は、誰かが弱い者をいたぶっているのをみて、カタルシスを覚えたりはしないからです。自分の誇りを踏みにじられても怒ることをしない、大人しい、そしてふがいない日本人の増大が、本書…

「法律リテラシー」の必要性(敷金・職質・保証人)

烏賀陽弘道『敷金・職質・保証人――知らないあなたがはめられる 自衛のための「法律リテラシー」を備えよ』ワニブックスPLUS新書、2018年より 「「市民が知らないままでいる」状態ほど、制限のない力の行使を望む人たちに好都合な環境はありません。」(p.285…

逆風は快楽である(上野千鶴子)

上野千鶴子『上野千鶴子のサバイバル語録』文藝春秋、2016年より 「逆風は快楽である 「逆風に強い」とも言われたことがある。 ひんしゅくは買うもの、とばかり、他人のいやがることをしてバッシングを受けると、来た来た、来た、と身構える。全身の神経が狩…

「巨大なる凡庸」としてのテレビ

「スイッチを入れれば誰でも簡単にテレビを楽しむことができます。テレビは、幼児から老人に至るまでのすべての人たちが理解することができ、共感することができるものを提示しなければならないのです。万人に理解と共感が可能なものとはすなわち凡庸なもの…

ルサンチマン(ressentiment)

フリードリッヒ・ニーチェ『道徳の系譜』岩波文庫、1950年、pp.95-97より 「苦しませることが最高度の快楽を与えるからであり、被害者が損失ならびに損失に伴う不快を帳消しにするほどの異常な満足感を味わうからである。苦しませること――それは一つの真の祝…

学問と宗教

小谷野敦『宗教に関心がなければいけないのか』ちくま新書、2016年 「『法華経』に「提婆達多品(だいばだったぼん)」というのがあり、そこに、竜女の女人成仏というのが書かれている。これは、竜王の娘の竜女というから、人間ではないのだが、女人のままで…