「強制」と「報酬」による問題解決が社会全体のガバナンスコストを増大させる

〈文化〉を捉え直す――カルチュラル・セキュリティの発想 (岩波新書)

「途上国や新興国のみならず、先進国においても新自由主義の論理と力学が、従来の社会的な紐帯や信頼を分断し、経済格差や意識格差を拡大し、個人を孤立(原子)化するリスクが顕著になりつつある」(p.51)

 

ソーシャル・キャピタル社会関係資本)が低減し、「協調」(コミュニティ・ソリューション)が困難になれば、「強制」(ヒエラルキー・ソリューション)ないし「報酬」(マーケット・ソリューション)による問題解決に頼らざるを得なくなり、社会全体のガバナンスコストは増大する。「他者」への想像力の希薄化は監視社会や訴訟社会、厳罰社会を誘引するとともに、かつて思想家アレクシス・ド・トクヴィルが警鐘を鳴らした、付和雷同的な「多数派の専制」を助長しかねない」(p.51)