2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

「第三者から「生きる意味」の説明を求められる筋合いはない」(荒井裕樹)

荒井裕樹『障害者差別を問いなおす』ちくま新書、2020年より。 ※強調・下線は引用者 相模原事件の被告人は、重度障害者は不幸を作り出すことしかできず、意志疎通のできない障害者は「人間」とは見なしていない旨の発言も報じられています。 この被告人は、…

障害者殺しの思想

横田弘『障害者殺しの思想【増補新装版】』現代書館、2015年より。 高度経済成長が謳われている時は金に任せて巨大コロニーを造り上げ、生産力の可能な「家庭」を守るために次々に障害者を送り込み、ひとたび不況、インフレが起れば「福祉見直し論」をブチ上…

「知識を求める心が、愛情を求める心を排除してしまうことがあまりにも多い」

ダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を[新版]』ハヤカワ文庫、2015年より。 この小説に出てくるあの光景、皿を落として割ってしまった知的障害のある給仕を食堂(ダイナー)の客たちがあざわらったとき、チャーリィが激昂したあの場面を思い出していた…

読書の価値(森博嗣)

森博嗣『読書の価値』NHK出版新書、2018年より。 世の中に、本というのは「無数」に存在している。実は有限なのだが、個人が読める量では全然ない。人生は多めに見積もっても三万日だから、毎日一冊読んでも、僅か三万冊しか読めない。だいたい国内では、平…

陰翳礼讃(谷崎潤一郎)

陰翳礼讃 作者:谷崎潤一郎 発売日: 2019/01/29 メディア: Kindle版 最近の若者たちの中には、自分のことを「陰キャ」と呼ぶことでうまく他人とコミュニケーションをとれない自分のことを慰めようとしたり、自分の部屋に一人こもってネット動画をずっと見てい…

昭和の女中さんの回想

中島京子『小さいおうち』文春文庫、2012年より。 快活で、いつもお幸せそうに振る舞っていらしたけれども、奥様の最初の結婚は、幸福ではなかったといえるだろう。 最初のご亭主は、そこそこの会社にお勤めのサラリーマンという話だったが、わたしが入った…

「人間の愚劣さも崇高さも両方を知るべき」(上野千鶴子)

上野千鶴子『発情装置:エロスのシナリオ』筑摩書房、1998年より。 ※強調は引用者 「援助交際」の女の子たちの現実をよく知っていそうに見える宮台くんの言い分は、そんなことしてると男にたかをくくるようになるよ、人生をみくびるようになるよ、というきわ…

「人間機械の絶望がファシズムの政治的目的を育てる豊かな土壌」(E. フロム)

エーリッヒ・フロム『自由からの逃走』東京創元社、1951年より。 ※下線・強調は引用者 われわれの願望――そして同じくわれわれの思想や感情――が、どこまでわれわれ自身のものではなくて、外部からもたらされたものであるかを知ることには、特殊な困難がともな…

「「自由」の名のもとに生活はあらゆる構成を失う」(E. フロム)

エーリッヒ・フロム『自由からの逃走』東京創元社、1951年より。 ※下線・強調は引用者 批判的な思考能力を麻痺させるもう一つの方法は、世界について構成された像をすべて破壊することである。さまざまの事実は、それらがくみいれられた全体の部分としてのみ…

「相対主義は人間の考える願望と関心を喪失させる」(E. フロム)

「事実と意見を区別しなさい」とは、学生に論文指導をしている先生の多くが一度は言うセリフかも知れない。しかし、事実を強調しすぎることが、考えることに対する人間の関心と情熱を奪ってしまうというフロムの視点が面白い。 エーリッヒ・フロム『自由から…