別冊宝島編集部編『<図解>しぼれ!体脂肪』書評

sunchan20042005-03-04

図解 しぼれ!体脂肪 (宝島社文庫)

図解 しぼれ!体脂肪 (宝島社文庫)

浅羽通明は『ニセ学生マニュアル』の中で、これからの教養とは『別冊宝島』を本棚に揃えていることだ、というようなことを言っていた。本書は2000年に刊行された『別冊宝島』536号を増補・改訂して文庫化したものである。

本書の内容を簡単に言うと、世に出回っているダイエットにまつわる奇説・珍説の誤りを、科学的な知識に基づいてわかりやすく説くものである。「1ヶ月で10キロ痩せる!」みたいな広告が明らかにウソであること(または無意味であること)ぐらいは知っていても、科学的にどうして間違っているかをきちんと説明できる人はそうそういないのではないか。自分もこの本を読んで「そういうことだったのか」と思わせられること度々であった。

【真実1】汗をかいたらどんどん水分補給しなくてはならない

よく体育会系の部活動で、部活動の最中は絶対に水を飲ませないというところがある。(自分の場合、中学の時のサッカー部がそうだった。)これがどれほど愚かで間違ったことか、当時は全く知る由もなかった。

汗をかいて水分を摂らないと、血液の中がドロドロしてきますから、水分をいっぱい摂ってあげる。そうすると、血液の中はサラサラになり、エネルギー源がうまく体の中で回転してくれるので、脂肪が分解されやすくなる。血管の中に溶けだした脂肪は、運動が終わってもしばらくは体の中を回っているから、いっぱい水分を摂ってあげると、尿からも排出されやすくなる。(18〜19頁)

脂肪燃焼のためでなくとも、水分を摂らずに激しい運動を続けると、エネルギーがきちんと出ないということになる。

【真実2】汗をかくことと脂肪を燃焼させることは全く別

実はこれが一番ショックだった。一般にダイエットをしようとする人は、多かれ少なかれ「運動でたくさん汗をかかないと痩せない」と思っているはず。そして実際に汗をたくさんかけば、体重は減る。ところが、当たり前のことなのだが、それは痩せたわけではないのである。

汗をかくと、体の中にあった水分が出るので、体重は軽くなります。だけどそれは脂肪が燃えたのでも、脂肪が減ったのでもない。(中略)水を飲めばすぐに戻ります。(31〜32頁)

毛穴から汗は出ても脂肪は出ない(32頁)。

これを当然のこととして知ってたとしても、運動をする時に汗をかこうとしてサウナスーツを着たりわざと厚着をしたりする人はたくさんいる。たしかにこれで汗の量は増えるだろう。でも運動量は同じなのだから、燃焼する脂肪の量には何の変化もない。ただ単に体内の水分が多く出るだけの話で、あとで水分を補給すれば元に戻る。そう考えると、運動して汗をかいた後にいちいち体重計に乗って一喜一憂するのがアホらしく思えてくる。

【真実3】激しい運動は、脂肪燃焼には非効率

これもよく聞く話ではある。瞬発力をつけたりムキムキの筋肉をつけるためには、きついトレーニングをしないといけないが、ダイエットのためなら軽い運動を長時間続ける方が有効だということ。でも痩せようとしてぜいぜいいいながらジョギングしてる人は結構いるはず。でも実際には、ぜいぜいいっても脂肪燃焼率が上げるわけではない。

運動の最中に、人と話ができるぐらいの強度が目安です。(120頁)

最高心拍数の85パーセント以上を超えると、脂肪燃焼にストップがかかると言われています。だから、きつい運動をしないで、ゆっくり長時間動いたほうが、効率よく酸素も供給できるし、脂肪酸が赤い筋肉に取り込まれます(121頁)。

【真実4】食事を抜くのは最悪のダイエット法

お腹が極度に減っているときに多量のエネルギーが補給されると、血糖とインシュリンが急上昇し、脂肪細胞での脂肪合成が高まるからです(73頁)

食事をすると、そこにエネルギーが入ってきます。細胞同士、お腹が空いているから、エネルギーの取り合いになりますが、そのときに、細胞の中で、いちばん強い細胞がほかを押しのけてエネルギーを優先的にとっていく。その、どの細胞よりも力強い細胞が脂肪細胞なんです。脂肪細胞がほかの細胞より強い理由は、人間が危機的な状態になったときに、脂肪は絶対に必要なものだからです。だから、いちばん強いわけなんです(同上)。

特に朝食を抜いたりすると、昼食や夕食がどか食い・早食いになって、太る原因を作ってしまう。さらに、摂取する栄養が足りないと、体が少ない栄養で体を維持させようとするから、エネルギーの発散を抑えてしまい、脂肪の燃焼も効率が悪くなってしまう。もし仮に食事を抜いて痩せたとしても、リバウンドする可能性はかなり高い。

その他にも本書では、タンパク質の重要性、ストレスで太る理由、基礎代謝量について、白筋・赤筋の違い、有酸素運動のすすめなどについて、多くのことを教えられた。自分も日々脂肪燃焼に余念がない(つもりだ)が、間違った方法であとで後悔しないよう、時々本書でラインを引いた箇所を読み返してみることにしよう。