デイヴィッド・シールズ編『イチローUSA語録』書評

イチローUSA語録 (集英社新書)

イチローUSA語録 (集英社新書)

イチローが天才であることは、彼が日本にいる頃から誰の目にも明らかだった。だが、日本の野球のことなど何も知らないアメリカの野球評論家たちは、誰一人としてイチローがメジャーで活躍できるとは思っていなかった。よくて2割8分ぐらいだろう、と。

ところが、そのような評価をイチローは見事に覆した。彼の卓越したスピードとバランスは、アメリカの野球ファンを釘付けにした。

日本で首位打者を七回とった男がメジャーリーグ首位打者を七回とった男のようにプレーするのを見て、全員が目を丸くすることになった。イチローは日本とメジャーリーグは違うという考え方を、格好よく、優雅にからかってみせたのである。(166頁)

本書はそんなイチローが、マスコミとのインタビュー等で語った言葉の一つ一つを、アメリカ在住のジャーナリストが簡潔にまとめたものである。日本にいた頃からおなじみだが、イチローは答えにくい質問にもサラリと答え、間違った指摘に対しては、マスコミに媚びることなく率直に反論する。その率直さが人気の一要素であることは間違いない。

本書には、イチローの言葉を英語に翻訳したものも併記されている。野球独特の言い回しが頻繁に出てきて、「英語ではこう言うのか」とわかって楽しめた。

ちなみに自分が気に入ったイチロー語録は、こんな言葉だった。

異郷シアトルで暮すことに不安を感じるかときかれて、イチローはこう答えた。「まだ英語も話せないし、プレッシャーは大きいです。ものの考え方や習慣が違うので、気をつかわなければならないこと、予想外のこともたくさんあります。しかしストレスの原因となることがあるとしても、それはそれでおもしろいと思います。ぼくが生きていることの意味を感じられるのは、そうしたことのおかげではないでしょうか?」(26頁)

留学中に是非読み返したい言葉である。