二宮清純『最強のプロ野球論』書評

最強のプロ野球論 (講談社現代新書)

最強のプロ野球論 (講談社現代新書)

「単調な野球中継」を「ドラマに満ちた投打の知恵比べ」に変える本

この本に登場する野球選手は全てずばぬけて優秀な人ばかりなので、全ての選手がこのようなことを実践しているのかどうかはわからない。しかし、本書で選手たちが言及している策略を知れば、野球中継が数倍楽しく見られることは間違いない。

印象的だったのは、スライダー主体の投手に故障が多い理由、「ピッチャー受難の時代」における剛速球投手の消滅、について書かれた箇所。また、イチロー対松坂の対決に象徴的な、選球をめぐる投打の駆け引き、2ストライクに追い込まれてからの打率の極端な低さなどは、野球中継を見る際に意識してしまう箇所かも知れない。とにかく、歴史的な薀蓄は言うまでもなく、技術論についても野球ファンにはたまらない一冊である。