西村顕治『情報スーパー活用術』(ちくま新書、1997年)書評

sunchan20042004-12-18

情報スーパー活用術 (ちくま新書)

情報スーパー活用術 (ちくま新書)

はっきり言って、本書はまだ情報収集のイロハも分からない人のための本である。実際には情報の「スーパー活用術」なんか何も書かれてないし、著者が読者層に想定している「ビジネスパーソン」にしてみれば、大体が多かれ少なかれ実践しているもののはずである。

「テレビは時間効率の悪いメディア」(84頁)であり、「単位時間当りの情報量は活字メディアに比べると、格段に少ない」(同)という意見には賛成。ただ、テレビには映像によるインパクトの強さという長所があるので、情報収集の副次的な手段として利用するのが妥当だろう。

従来の暗記法は、「どう覚えるか」を重視しすぎて、「どう思い出すか」を疎かにしているという著者の指摘も面白い。「覚えていても思い出せなければ意味がない」(195頁)のだから。覚えることができて、かつ思い出すのに効率的な情報へのアクセスとは、以下のような流れだと著者は言う。「①好奇心を持って情報に接する→②情報を価値判断する→③読み込んで理解を深める→④関連する事柄を連想する→⑤自分なりの説明や解釈を施して情報を加工する」(195頁)こう言われてみると、書評を書くというのは、情報へのアクセス方法としてはまんざらでもないと思えてくる。確かに、書評を書いて自分なりの価値判断や説明を加えた本については、そうしなかった本に比べてはるかによく内容を覚えている。日本人は大変に活字を読む国民だそうだが、批判的に読んでいる人はほとんどいないとは桜井邦朋の指摘である。情報に「触れること」と情報を「加工すること」の差はやはり大きい。