チャルマーズ・ジョンソン『アメリカ帝国への報復』書評
- 作者: チャルマーズ・ジョンソン,鈴木主税
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2000/06/26
- メディア: 単行本
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東アジアの主要諸国・地域を個々に検証しながら、アメリカの帝国主義を一つ一つ暴いていく本書の議論には、かなりの説得力があることは認める。ただ、あらゆる危機的な状況の背後にアメリカ(またはアメリカの意図に通じた現地政府)の陰謀が存在していると書くことは、それが過度になされているとみなされれば、陰謀論(conspiracy theory)として退けられる可能性が高い。現にamazon.comに載っている原書のレビューにはそのようにみなしているものがいくつか散見される。そのような陰謀論のみで戦後の東アジアの政治経済を説明することはできない。戦後史の否定的側面を指摘することは重要だが、現在の倫理的高みに安んじて、当時の状況での実現可能な代替策を示さなければ、その批判の価値は半減する。
ジョンソンは、紛れもなく極めて質の高い知日家である。しかし彼の批判を全て鵜呑みにすることはできない。彼の日本論がアメリカで一定の影響力を持っていることを考えると、そして江藤淳が言うように、親日家とはもしかしたら誰よりも日本を深く憎んでいる外国人であるかも知れないということを考えるならば、日本人は積極的に彼との議論に応じるべきだろう。