玉木正之、ロバート・ホワイティング『ベースボールと野球道』書評

sunchan20042005-03-18

ベースボールと野球はお互いに高め合うべき

ベースボールと野球は全く別物のスポーツという前提に立ち、具体的な相違点を各項目につき数行程度で簡潔に列挙したもの。メジャーの乱闘はパンチによる殴り合いが多く、プロ野球の乱闘は小突き合いが多い理由は?といった怪しいながらも笑える比較から、選手のあらゆる面における自由度の差、マスコミの球団への無批判な姿勢、非科学的(精神主義的)なトレーニング法や治療法などといった、日本のプロ野球に巣食う深刻な問題を指摘するものまで多岐に渡る。もちろんトレーニング法などについては現在ではプロ野球でもかなり改善されていると思うが、マスコミの堕落や球団運営の問題は、本書が書かれた時期から全く変わらず存在している。

エンターテインメントとしてのメジャーリーグには、確かにプロ野球にはないダイナミクスがあり、それが多くのファンをひきつけ、また選手の質を高めている。ただ、日本人が好きな技術的な分析(投打のフォーム、変化球の種類、監督の采配など)も、それはそれで一つの楽しみ方であり、野球観戦を数倍楽しくさせるものであると思う。メジャーリーグプロ野球の関係がかつてないほど密接になった今、お互いが自分にない相手の利点を採り入れて高め合える環境ができつつあるように思う。