大野豊『絶対うまくなるピッチング』書評

変化球主体の投手に故障が多いのは何故か
ここまで来ればもうマニアの域かも知れません。

書いてあることのほとんどは、どの投手も実践しているように思われることばかりだった。自分が読みたかったのは「第2章 変化球の投げ方」である。変化球を主体とする投手になぜ肘を痛める選手が多いのか。特に最近はスライダーを主体にする投手が、肘を痛めたせいで現役からの引退を余儀なくされるパターンがよく起こっている。なぜなのか。投げ方に何か訳があるのだろうか。

スライダーやカーブを投げる場合、投げる時に手首を内側にひねる。また変化球を主体にする投手なら、左右への投げ分けで打者を翻弄するために、逆方向に曲がるシュートもよく使う。シュートは反対に外側へのひねりを必要とする。これが肘を痛める最大の原因である。両方へのひねりを多用すれば肘への負担は極めて大きくなり、著者の大野自身も、シュートを投げていて「ヒジを痛めて一時、投げられなくなったことがある」(79頁)と言っている。

投手の腕は消耗品だという認識が必要だ。日本では完投勝利が称えられる傾向があるが、投手にとってはむしろ5回くらいで交替した方がいいと言える。そして先発投手は最低でも中4、5日の休養をとる必要があるだろう。

ちなみにカーブとスライダーの違いがよくわからない人がいる。自分もそうだった。ほとんど同じだが、カーブは曲がり方が急である分、スピードは落ちる。スライダーはストレートと変わらないスピードがあり、打者の目前でスッと逃げるように曲がる。もちろんひねり方次第で曲がり方も大きく変わるし、投手によって違いもある。また、カーブの場合は変化を大きくするために、球の縫い目に沿って人差し指と中指をそろえて握る。スライダーの場合は縫い目をまたぐようにして握る。投げる時に縫い目の引っかかりが変化を大きくするためだろう。