「泣きたくなるような青い空」そして『スカイ・クロラ』

今日のワシントンDCはとてもいい天気だった。
自転車で家から通りまで出たとき、何物にも遮られることのない
青い空がそこに広がっていた。
いったん家に戻ってカメラを持ち出し、撮ってみる。


そういえば誰かが「泣きたくなるような青い空」って表現してたな。
誰だったかな?辻仁成だったかな?
まあ誰でもいいや。


キャンパス内には、満開ではないが桜が咲き始めていた。
空と併せてそれも撮ってみる。
もう春だ。


森博嗣の『スカイ・クロラ』って本を思い出した。
最近文庫化されたが、自分が思い出したのは単行本のほう。
その本の表紙も確かこんな青い空だった。
まだ読んでないけど、あの空と表紙の言葉がどうしても自分の頭を離れない。


その本の表紙はいう。


 僕はまだ子供で、
 ときどき、
 右手が人を殺す。
 その代わり、
 誰かの右手が、
 僕を殺してくれるだろう。


青い空には、不思議で怪しい魅力があるような気がしてきた。


今日のように雲がほとんどない青い空。
これはかつてあの人と見た空と同じ。
あの時も雲がほとんどない快晴だった。
あの人はこの同じ空の下でいま何をしているのだろう。


夕暮れになって図書館の窓越しに撮った空は、
息を飲むほどの青さをすでに失い、
淡い桃色が一日の終わりを告げていた。


青さでカラ元気を出していた空も、
見上げてくれる無数の人たちに気を遣いすぎて
疲れてしまったようだ。

森博嗣『スカイ・クロラ』中央公論新社、2001年。画像は Amazon.co.jp より)