吉田修一『パーク・ライフ』(文春文庫、2004年)書評
- 作者: 吉田修一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/10/08
- メディア: 文庫
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本書内で出てくる「スタバ女」の描写が印象的だった。
久しぶりにスターバックスに入ったのだが、前日の彼女の話が心に残っていたこともあり、ひとりずつ各テーブルのしゃれた椅子に座り、携帯でメールをチェックしたり、ファッション誌を捲ったり、文庫本を読んだりしている女性客たちの姿に、どこか近寄り難いオーラを感じた。注文したカフェモカが出てくるのを待つあいだ、カウンターの隅に立って彼女たちを観察していると、奇妙な共通点に気がついた。ふつう喫茶店にひとりで入れば、まず窓側の席を探し、飽きることなく通りを眺めるはずだが、誰ひとりとして、店の外へ目を向けている者がいないのだ。外へ目を向けないだけではない。彼女たちは一様に高価そうな服をセンスよく着こなし、髪型にしろメイクにしろ、テーブルに置かれた小物類にしろ、非の打ちどころがないほど洗練されているというのに、その誰もが「私を見ないで」という雰囲気をからだから発散させていた。(43〜44頁)
別に自分はおしゃれでもなんでもないが、本を読みながらよく喫茶店で一人の世界に入っていることがある。「私を見ないで」というよりも「周りに誰かいたの?」みたいな感じで。よく街なかでの人間ウォッチングは面白いと言われるけれど、自分はそういうことはほとんどしたことがない。ひょっとしたら自分も知らず知らずのうちに「スタバ男」になっているのかも知れない。