公共図書館関連、2冊
公共図書館の論点整理 (図書館の現場 7) (図書館の現場 7)
- 作者: 田村俊作,小川俊彦
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2008/02/21
- メディア: 単行本
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- 作者: 鈴木康之,坪井賢一
- 出版社/メーカー: 日本図書館協会
- 発売日: 2005/01
- メディア: 単行本
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社会人になってから公共図書館を使う頻度が急激に増えた。(自分が主に利用しているのは、日野市立図書館と調布市立図書館である。)担っている役割、期待されている役割、館内の雰囲気、蔵書の性格など、あらゆる点において大学図書館とは異なっている。その公共図書館は、いまどの自治体も財政の逼迫のせいで資料費をどんどん削られているという。
もともと公共図書館をめぐる問題については関心があったので、この機に田村俊作、小川俊彦『公共図書館の論点整理』を読んでみた。タイトルのとおり、今公共図書館が直面している問題をコンパクトにまとめており、これ1冊で今何が問題なのかが俯瞰できる。また巻末の参考文献も詳細で、この本をスタートにしてより深く学ぶこともできる。
この本の中で取り上げられている問題は、「図書館は『無料貸本屋』か」、「ビジネス支援サービス」、「図書館サービスに課金すべきか」、「司書職の専門性(司書職制度の是非)」、「業務委託問題」、「盗難・紛失とBDS(Book Detection System、手続きをせずにゲートを通って退館しようとするとピーッとなって足止めされる機械)の是非」、「自動貸出機の是非」というように、多岐にわたっている。関心のある章だけ読んでも十分使える。
もう1冊読んだのが、鈴木康之、坪井賢一『浦安図書館を支える人びと』である。公共図書館に詳しい人なら誰もが知っているこの浦安市立図書館は、貸出冊数が日本一、公共図書館の新たな役割(ビジネス支援サービスなど)にも積極的に取り組んでいる先進的な図書館である。実際に行ったことはないが、ぜひ行ってみたいと思わせるような内容の本であった。
景気が回復しているとはいえ、地方自治体の財政事情が大幅に改善しているわけではない。不況期に固まった支出抑制・削減の方向性はこれからも変わりそうにない。これらの本を読んで公共図書館が非常に重要でかつ魅力的な存在であることは十分伝わるが、単に「公共図書館は必要なのだから、絶対に資料費を減らしてはならない」と言うだけでは、今の「縮小再生産」的な公共図書館の運営に劇的な変化をもたらすのは不可能ではないか。なぜなら、福祉や教育の分野でも同じ論理で自己主張しているだろうから、それだけでは独自性が明確ではないからである。
公共図書館自身が改革すべき点もまだあるだろうが、それと同時に限られた予算内での効果的なPRや時には政治的なロビー活動も、図書館関係者が一体になってやらないといけないのではないだろうか。