外交史の危機?

今日、偶然大学の図書館で立ち読みしていて見つけた

細谷雄一「外交史と現代政治分析」『レヴァイアサン』40(2007春)

という論文を読んだ。
細谷氏によると、

「社会科学として著しい進歩を見せてきた政治学の世界でも、外交史が占めるべき位置はほとんど失われつつある」(66頁)

のだという。どういうことだろうと俄然興味が湧いて、残りわずか5ページを全部読んでみたのだが、残念ながら「外交史の衰退」についてそれ以上の記述はなかった。学問としての外交史が衰退しているというのは門外漢の自分にはとても意外だったので、どういう現象を指してそう述べているのか、また原因は何なのかを知りたかった。そのような内容を論じている論文や文献は他にあるだろうか?

一般によく言われるのは、「理論研究は事象の一般性を追求し、歴史研究は事象の特殊性を追求する」という区別の仕方であるが、細谷氏は外交史も現代政治分析も

「そのいずれにおいても、不確定性が不可避であること、そして一定程度の単純化が必要であることである」(69頁)

と述べていて興味深かった。
(キング他『社会科学のリサーチ・デザイン』の中で論じられているようです。)

よく理論を誤解している人が「現実は理論ほど単純なものじゃない」という理論批判をすることがあるが、そもそも全ての学問が単純化という作業に携わるものである。そもそも考え方が逆で、現実が複雑すぎるから、見通しをよくするために現実を単純化・一般化して理論を作るのである。

このことは理論研究も外交史研究も同じだろうと思う。