「人は他人に支配されようとは思わない」

毎回一つずつ、経済学や精神医学の理論をわかりやすく紹介する勝間和代の連載コーナー、「人生を変える『法則』」も今回が最終回。

その中の一節。

私たちは当然、他人からの影響を受けますが、それは配偶者や親友など、上質世界に含まれている人からの影響が大きいという意味です。

私たちが、誰を自分の上質世界に入れるのかは、さまざまな付き合いの中で決めています。興味深いのは、この上質世界に、いったん誰かを入れても、付き合う間に「あること」をされ続けると、その人を上質世界から追い出すのです。それが配偶者ならば離婚となるし、親友ならば、単なる友人に格下げか絶交することになります。

その「あること」とは、「相手からコントロールされる」です。具体的には(1)批判する(2)責める(3)罰する(4)脅す(5)文句を言う(6)ガミガミ言う(7)目先の褒美で釣る――で、グラッサー博士はこれを、「致命的な七つの習慣」と名付けました。

では、この習慣に陥らずに相手から信頼されるには、どうすればいいでしょうか。グラッサー博士は、相手に対して(1)傾聴する(2)支援する(3)励ます(4)尊敬する(5)信頼する(6)受容する(7)意見の違いを交渉する――を提唱し、これを「身に付けたい七つの習慣」と呼んでいます。

これらの行動原則は、夫婦や友人の関係だけでなく、親子や企業の上司・部下の関係にも当てはまります。

上質世界というと分かりにくいのですが、要は、相手を無条件に信頼できるかどうかを、私たちは常に相手の言動などから判断しているということです。そして、自分たちをコントロールしようとする人は、なるべく遠ざけようとしているのです。


朝日新聞2011年3月26日)

「無条件に」信頼できる人などいないけど、付き合いの中で耳を傾けるべき人とそうでない人をやりとりや時間の経過とともに入れ替えているというのは、おそらく誰もがやっていることでしょう。

それでも人は、程度の差はあっても他者をコントロールしたがるものだと思う。自分にとっての快適さと他者にとっての快適さが異なる場合に(1)支配、(2)別離、(3)妥協(協調)の選択肢があるとして、人は積極的には自分の置かれた環境を変えたくなくて(1)に流れやすいのではないだろうか。様々な事情から(2)がすぐには不可能である場合には、なおさらそうではないかと思う。

理論の善し悪しは別にしても、それをきっかけに自分が持ちやすい考え方を外の視点から検証してみることは必要なことだと思う。