言葉の力、文学の力

3月29日の朝日新聞文芸時評」において、文芸評論家の斎藤美奈子が「本にできること」と題してこんなことを書いている。

出版・文筆業界隈でもチャリティーが動きはじめ、被災地の子どもたちに絵本を送る運動が各地でスタートし、「週刊文春」3月31日号は28名の文筆家による「苦難を乗り越える一冊」を紹介して援護射撃する。

共感しつつも、よぎる疑問。こんなときに本? 「そんなもの後回しだ」といわれない?

(中略)

私は文学を、読書を過大評価はしていない。ただ、文学にしかできない仕事があるのは事実だし、読書でしか得られない効用があることも知っている。
あなたが過去に元気づけられた本、慰められた本を思い出そう。その情報をツイッターやブログやメールで流そう。
現地にボランティアで入る人は1冊でも2冊でも本や雑誌を荷物に入れていこう。持ち寄った本で避難所にブックコーナーをつくろう。避難所が学校で図書館が無事ならば、一部でいい図書館の本を開放しよう。不安がる子どもたちや高齢者のために読み聞かせをしよう。

新学期がはじまり、被災地が少し落ち着いたら、小中学生の出番が来る。ひとり1冊ずつ好きな本を持ち寄って、思いを託した手紙をはさみ、被災地や避難先の友達に届けよう。
本なんか邪魔なだけ? そう思うならやめておけばいい。支援の仕方は多様でよいのだ。

人はパンのみにて生くるにあらず。まだまだ必需物資が不足している状況であるとしても、それが満たされたあとも被災地に残された人たちの空虚な精神状態は続いていく。このような状況だからこそ響く言葉があると思う。今こそ文学の、言葉の力が発揮されるべき時ではないか。