荒俣宏の「仕事力」(続)

8月19日・朝日新聞求人欄より一部抜粋。

*   *   *

荒俣宏「恥をかけば力がつく」

トライ&エラーは欠かせない

どのような仕事でもそうですが、取り組み始めてすぐに思いがけなくいい結果が出たとしても、それは能力があるのではなく、単なるビギナーズラックだと思った方がいい。俗に言うまぐれです(笑)。

あるいは同期で営業に配属されたのに、3か月くらいで結構な金額を売る同僚が出てくる。自分は一円も売れない。針のむしろに座っているように焦りますよね。しかしそんな早い時期に成績を上げる人は、知り合いやツテを頼ってうまく回っているか、あるいは自分の得意技を使っているかでしょう。要するに今までの貯金を切り崩しているだけで、すぐに限界がやってきます。早い時期につかんだ「要領」は、本質的な仕事の力を伸ばしてはくれません。

知り合いもツテもない人間は、自分なりの方法を考えるしかありませんし、お手上げなら、上司に「もう許してください」と潔くかぶとを脱ぐしかない。できない自分、失敗してしまった自分は悔しく情けないですが、まずはそれを認め、分析することが力をつける道なのです。そして次の手を試してみる。

恥をかいても、「こんな風に考えている」とか「こうやってみる」とかとアウトプットすることが重要です。今は、老いも若きも勉強したりセミナーに通ったりとインプットに懸命ですが、それでは伸びない。人間は恥をかくのが嫌いだからこそ、トライ&エラー体験は深く刻まれ、それが潜在能力になっていくんですね。(談)