外交の優先度(佐藤優)

東京新聞(2013年8月16日)本音のコラム「外交の優先度」(佐藤優)より。

麻生太郎副総理兼財務相の「ナチスの手口に学べ」発言は、ボディーブローのように日本外交に悪影響を与えている。ここで日本が、第二次世界大戦後、国際社会で主流となった自由と民主主義というゲームのルールを遵守する国であるということを強調する価値観外交が重要になる。


国家にとって領土は礎だ。冷静に考えてみよう。わが国の領土である竹島は韓国によって、北方領土はロシアによって法的根拠なく支配される状態が続いている。しかし、韓国やロシアが、わが国の領土を追加的に奪取することはない。これに関して、中国は武力を背景に沖縄県尖閣諸島を奪取する現実性がある。


このような状況で、日本は韓国、ロシアとの関係改善を優先すべきだ。韓ロ両国は、選挙によって指導者を選ぶという民主主義のルールが定着していることを外交的に最大限に活用すべきだ。


韓国との関係では、慰安婦問題、竹島問題で、最大限の譲歩をし、歴史カードを用いて中韓が連携して日本に対峙している現状を脱構築すべきだ。


対ロ外交に関しては、十九日に行われる日ロ外務次官級協議が死活的に重要だ。ある情報によると、この交渉の日本側責任者である杉山晋輔外務審議官北方領土交渉の経緯について猛勉強しているそうだ。成果に期待する。(作家・元外務省主任分析官)