「Goodwill Hunting」名シーン――一番大切なものとは?

Good Will Hunting: A Screenplay

Good Will Hunting: A Screenplay

今までに見てきた映画の数は数え切れないが、どうしても忘れられない映画というのはいくつかある。自分が好きなのは、ラッセル・クロウアル・パチーノ主演の『インサイダー』と、そしてマット・デイモン主演の『グッドウィル・ハンティング』である。

そして、『グッドウィル・ハンティング』の中で最も好きなシーンの一つがYou Tubeにあった。このシーンはこの映画の中で最も美しく重要なシーンの一つになっている。

(ちなみにこの映画でロビン・ウィリアムズアカデミー賞助演男優賞マット・デイモンベン・アフレックアカデミー賞ゴールデングローブ賞脚本賞を受賞している。)

このシーンをすべて暗誦したくて、自分は数年前にスクリプトまで買ってしまった。完全には聞き取れない箇所もあったので、これを読んですっきりした。(下にセリフを書いておきます)

「君は本当の喪失を知らない。なぜなら、それは自分自身以上に愛するものがあった人にしかわからないものだから。」

このセリフに限らず、含蓄に富んだセリフ満載の名場面である。このシーンの最後で、ウィリアムズ演じるショーンは、デイモン演じるウィル個人の存在を「かけがえのないもの」として承認する。本で学ぶことなどクソだと言って。

「他者のかけがえのなさの承認」。これ以上に人生において大切なものなどあるのだろうか。(承認については勢古浩爾の本を読んでいただければよくわかる。)

英語のセリフの下には拙訳も付けておく。


Sean: Thought about what you said to me the other day, about my painting. Stayed up half the night thinking about it. Something occurred to me... fell into a deep peaceful sleep, and haven't thought about you since. Do you know what occurred to me?

Will: No.

Sean: You're just a kid. You don't have the faintest idea what you're talkin' about.

Will: Why thank you.

Sean: It's all right. You've never been out of Boston.

Will: Nope.

Sean: So if I asked you about art, you'd probably give me the skinny on every art book ever written. Michelangelo. You know a lot about him. Life's work, political aspirations, him and the pope, sexual orientations, the whole works, right? But I'll bet you can't tell me what it smells like in the Sistine Chapel. You've never actually stood there and looked up at that beautiful ceiling... seen that.

If I asked you about women, you'd probably give me a syllabus about your personal favorites. You may have even been laid a few times. But you can't tell me what it feels like to wake up next to a woman and feel truly happy.

You're a tough kid.

And I'd ask you about war, you'd probably throw Shakespeare at me, right, "once more unto the breach dear friends." But you've never been near one. You've never held your best friend's head in your lap, watch him gasp his last breath looking to you for help.

I'd ask you about love, you'd probably quote me a sonnet. But you've never looked at a woman and been totally vulnerable. Known someone that could level you with her eyes, feeling like God put an angel on earth just for you. Who could rescue you from the depths of hell. And you wouldn't know what it's like to be her angel, to have that love for her, be there forever, through anything, through cancer. And you wouldn't know about sleeping sitting up in the hospital room for two months, holding her hand, because the doctors could see in your eyes, that the terms "visiting hours" don't apply to you.

You don't know about real loss, 'cause it only occurs when you've loved something more than you love yourself. And I doubt you've ever dared to love anybody that much. And look at you... I don't see an intelligent, confident man... I see a cocky, scared shitless kid. But you're a genius Will. No one denies that. No one could possibly understand the depths of you. But you presume to know everything about me because you saw a painting of mine, and you ripped my fucking life apart.

You're an orphan right?

Sean: Do you think I know the first thing about how hard your life has been, how you feel, who you are, because I read Oliver Twist? Does that encapsulate you? Personally... I don't give a shit about all that, because you know what, I can't learn anything from you, I can't read in some fuckin' book. Unless you want to talk about you, who you are. Then I'm fascinated. I'm in. But you don't want to do that do you sport? You're terrified of what you might say.

Your move, chief.


【拙訳】

ショーン:
こないだ君が僕に行ったことを考えたんだ。僕が描いた絵についてだよ。夜中まで起きてずっと考えていたんだ。そしてあることがひらめいて、そのあとはぐっすり眠れた。それ以降は君のことを考えなくなった。何がひらめいたかわかるかい?

ウィル:
いや。

ショーン:
君はまだ子供だ。自分で何をしゃべっているのか全くわかっていない。

ウィル:
そりゃどうも。

ショーン:
まあいい。君はボストンから出たことがないんだろ?

ウィル:
ああ、ない。

ショーン:
もし僕が芸術について君にたずねたら、君はおそらく今までに書かれた本の中の細かい情報まで僕に示すだろう。例えばミケランジェロ。君は彼についてたくさんのことを知っている。生涯の作品、政治的な野心、彼と法王の関係、性的な嗜好、すべての作品。でもきっと君は、システィナ礼拝堂がどんな香りがするのかわからない。君は実際にそこに立って、美しい天井を見上げたことが一度もないんだ。一度も。

もし僕が君に女性についてたずねたら、君は自分の個人的な好みをいろいろ挙げてみせるだろう。何度か女性と寝たことだってあるかも知れない。でも君は、朝に愛する女性のとなりで目を覚まし、心から幸せを感じることがどういうものなのか、僕に教えることができないんだ。

君は難しい子だ。

君に戦争のことについてたずねたなら、君はおそらくシェイクスピアを僕に挙げてみせるだろう。『ヘンリー五世』をね。でも君は一度も戦争というものを身近で感じたことがない。頭を君のひざの上にのせて、君に助けを求めながら息をひきとろうとしている親友を見たことなど一度もないんだ。

君に愛についてたずねたら、おそらく君は詩を引用してみせるだろう。でも君は、ある女性に出会って、自分自身がとても傷つきやすい弱い存在になってしまうことを知らない。視線で君を圧倒し、神は自分のために天使を地上につかわしたのだと思ってしまうような人に出会ったことがないんだ。それは君を地獄の底から救ってくれるような人だ。そして自分自身が彼女の天使になるということ、彼女だけを愛するということ、たとえ何が起ころうとも―たとえガンにかかろうとも―永遠にそばにいるということがどんなことなのか君にはわからないだろう。医者も君の目を見て、「面会時間」のルールが君には適用されないとわかっているから、病院で2ヶ月間彼女の手を取りながら傍らで座って眠るんだよ。それがどういうものなのか君にはわからないだろう。

君には真の喪失というものがどういうものなのかわからない。なぜなら、それは自分自身以上に愛するものがある人にしか起こらないことだからだ。今までに君がそこまで強く誰かを愛する勇気があったとは僕には思えない。君を見ても、知的で自信にあふれている人間には見えない。そこにいるのは、生意気で驚くほどびくびくした子供だ。でもウィル、君は天才だ。誰もそれを否定しはしない。おそらく誰も君の能力の大きさを理解できないだろう。でも君は、僕が描いた絵を見ただけで僕のすべてがわかると生意気にも言った。そして僕の人生をずたずたに引き裂いた。

君は孤児なんだろ?

君の人生がいかにつらいものだったか、君がどんな気持ちでいるか、君がどんな人間なのか、それらを僕が知っている、なぜなら僕が『オリバー・ツイスト』を読んだことがあるから、なんて君は考えるかい?それで君の人生をうまく理解したことになるのか?個人的にはそんなことはどうだっていいんだ。もし君が自分がどんな人間なのかを僕に話してくれなければ、僕は君から何も学ぶことはないし、本からそれを学ぶこともできない。でも話してくれるなら、僕は心をひかれるだろう。僕はいつだっている。でも君は話したくはないんだ。君は話すのが怖いんだよ。

あとは君次第だよ、ウィル。