心に残る映画:『インサイダー』――真のパートナーとは?

        


最初見た時の感動があまりに強くて、自分でDVDを買ってしまった映画がある。それがアル・パチーノラッセル・クロウ主演の『インサイダー』である。

大手タバコ会社の研究部門で働くワイガンド博士(ラッセル・クロウ)が、解雇されたのを機に内部告発を行おうとするが、会社側はあの手この手でそれを防ごうとする。その内部告発をなんとかテレビ番組で取り上げようと奔走するCBSのニュースショー「60ミニッツ」のプロデューサー、バーグマン(アル・パチーノ)。タバコ訴訟で人生をかけて戦う二人の男の物語。実話に基づいて作られた映画である。この映画の中には人間の強さと弱さの全てが込められている。

そしてこの映画の中のアル・パチーノに体現されているダンディズムは、自分にとって男の理想型になってしまっている。孤立無援になって打ちひしがれるアル・パチーノも、スクープをもみ消されそうになる時に発する彼の「あんたはビジネスマンなのか?ニュース屋なのか?」と仲間に迫る時のアル・パチーノも、最高にかっこいい。エンディングで会社を辞める決意をしたアル・パチーノが、コートのえりを立ててCBS本社から出て行くところも、かっこいい。(映画のために太ったラッセル・クロウの演技もすばらしいが、彼の一番かっこいい姿が見られるは、この映画よりも『L.A.コンフィデンシャル』ではないだろうか。)

いろんな見方があると思うが、自分にとって特に印象的だったのは、バーグマンの妻と、ワイガンドの妻の対比。
会社から数々の脅迫や嫌がらせを受け、精神的に追いつめられていくワイガンドとその家族。夫が解雇されたり、子供たちが生まれ育った家を引っ越さなくてはならなくなった時、ワイガンドの妻はただひたすらメソメソと泣く。そしてまもなく、そんな生活に耐えられなくなって離婚を決意する。ワイガンドはまったくの孤独に追いやられてしまう。

それとは反対に、アル・パチーノの妻は、夫が打ちひしがれていて自暴自棄になりつつある時、「先を見通して行動するのよ」と助言する。夫が「俺は孤立無援だ」と弱気になっている時も、あれこれ言わずに存在そのもので夫への気遣いを示す。強い女性である。

結婚しているかどうかに関係なく、真のパートナーとは、相手が今直面している困難をともに乗り越える意志があるかどうかで決まると思う。それがなければ(精神的・経済的)依存関係でしかなくなり、双方向のリスペクトは不可能になる。映画の中でワイガンドの妻のような人を見て「そこで支えなくて他に誰が支えるんだ」と憤ってみせても、現実では結構自分も似たようなことをやっているのかも知れない。おそらく誰もがそうやっている。自己を思考の中心から外すことは簡単ではない。

☆   ☆   ☆

自分がいい映画だと思うものには共通点がある。どれほど人間の汚さ・ずるさ・せせこましさが現れようとも、「それでも人は生きていける」という確信を与えてくれるもの。人間を好きにさせてくれるもの。好きな映画はどれもそういう性格を持っている。この『インサイダー』も例外ではない。