心に残る映画:『ホテル・ルワンダ』

   

とんでもない衝撃の映画だった…。これは見たあとしばらく立ち直れない。間違いなく今までに見た映画のベスト3に入る。

以前にフローラン・ダバディ著書『「タンポポの国」の中の私』の中で、

「映画はアートであってエンターテインメントではない」

「映画館を出たあとにお茶してショッピングを楽しんでというのではその映画は失敗。もうショックで口がきけなくなってしまうくらいが普通」

と言っていたが、この映画を見てまさにこれが「ショックで口がきけなくなってしまうぐらい」の映画だと思った。

すでに広く知られているとおり、この映画はルワンダ大虐殺の際の実話に基づいて作られている映画である。はっきりと目に見える形で迫ってくる死の恐怖。生々しくて残酷なシーンはそれほど出てこないが、セリフの端々にその残虐なシーンの描写が出てくる。非戦闘員がナタのような原始的な武器で切り殺されていく。まだ幼い子供が目の前で見せしめのようになぶり殺されていく。

今までこの事件のことは知識としては知っていたが、実際に映像として自分に迫ってくることによって、この事件の衝撃がストレートに伝わってくる。

世の中には自分のことにしか興味を持たない人・持てない人・持とうとしない人がこんなにたくさんいるというのに、なぜ人間は時として自分の命を死の危険にさらしてまで利他的な行為をとろうとするのか(この点におけるこの映画の強調点は映画『戦場のピアニスト』と違う点かも知れない)。そして、どうやったらあのような狂気が生まれてしまうのか。この事件から得るものはあまりに大きく、しかし「じゃあ自分に何ができるのか?」と言われてますます悲観的になるしかない性格のものである。

どうしてこの映画がここまで評判になり、またうちの大学でも上映会やルワンダ大虐殺を忘れないためのパレードが行われたりしていたのかが今頃になってよくわかった。