マーロン・ブランド自伝

母が教えてくれた歌―マーロン・ブランド自伝

『ゴッドファーザー』で私はアカデミー主演男優賞にノミネートされたが、授賞式に出席するのはどうも気がすすまなかった。六十年にわたりアメリカ・インディアンを不当に扱い、中傷してきた映画産業の、お祭り騒ぎの片棒を担ぐのは、ばかげていると思ったのだ。おりしも、ウーンデッドニーでは二百人のアメリカ・インディアンが包囲されていた。だが、もし私がオスカーを手にすれば、アメリカ・インディアンが六億人の観客に向かって語りかけるという、史上初のチャンスとなるかもしれない。ハリウッドが彼らに加えてきた名誉棄損に対する、ささやかな埋め合わせだ。そこで私は、アメリカ・インディアンへの虐待および人種差別全般を非難する声明をしたため、友人のサシーン・リトルフェザーに授賞式へ私の代理人として出席して、それを読みあげてもらうように頼んだ。ところが授賞式のプロデューサー、ハワード・コッチは、独断でサシーンの言葉をさえぎり、スピーチを止めさせたのだ。彼女はまわりの圧力にめげず、二言三言ではあるが、アメリカ・インディアンの代表としてアドリブで声明をのべた。私はそんなサシーンを誇らしく思った。（418頁）

ブランドが出席を辞退したアカデミー賞授賞式でサシーンがスピーチする映像。
https://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=2QUacU0I4yU