「トゥーキュディデースの罠」:中国の勢いとアメリカの不安
キューバ危機を組織過程モデルと政府内政治モデルから観察して、分析レベルの議論にも火をつけた国際関係論の名著『決定の本質』の著者グレアム・アリソンが、近年の中国の強硬な姿勢について面白い記事を書いています。
http://belfercenter.ksg.harvard.edu/publication/22265/avoiding_thucydidess_trap.html
歴史をふりかえれば、紀元前5世紀の新興国アテネとその挑戦を受ける覇権国スパルタも、第一次世界大戦に至るまでのドイツとイギリスも、そこには「新興国の勢いvsその挑戦に対抗する覇権国の不安」(rise and fear)があり、今の中国とアメリカの関係もまさにそのような関係だと言っています。1500年以来、新興国が覇権国に挑戦した15のケースのうち、戦争に至らなかったのは4つしかないそうです。
長らく絶版だったのが2005年にリクエスト復刊されたトゥーキュディデースの『戦史』(岩波文庫)には、勢いづくアテネとそれに恐怖するスパルタが徐々に戦争を不可避にさせていった過程が書かれており、そこからアリソンは「トゥーキュディデースの罠を回避せよ(Avoiding Thucydides's Trap)」と述べています。
では歴史の先例と同じにならないようにするにはどうしたらいいかというと、最後にアリソンは「アメリカと中国は腹を割って話し合え」と言っているだけなので(笑)、あとは各自が自分の頭で考えなくてはならないのでしょう。