「杉本も干し柿を食べたら、戦争へ行く前の杉本に戻れるのかなあ」

腹の中

アニメ『ゴールデンカムイ』第二期 エピソード17より

 

杉本:「アシリパさん、鈴川は悪人だ。悪人は人の心が欠けているから、普通の人間より痛みも感じないはずだ。だからいちいち同情しなくていい」

アシリパ:「子供だと思ってバカにしてるのか!そんな理屈でごまかすな!」

杉本:「俺はそう思うようにしてきた。戦争の時も敵兵は俺たちとは違って、苦しまずに死ぬはずだって。戦場では自分を壊して別の人間にならないと戦えない。俺たちはそうでもしなきゃ生き残れなかったんだ」

アシリパ:「みんな、元の人間に戻れなかったのか?」

杉本:「戻れた奴もいただろうさ。故郷へ帰り、家族と過ごす時間で元の自分を取り戻せるのかもな。日本に帰ってきても元の自分に戻れない奴は、心がずっと戦場にいる」

* * * * *

杉本:「アシリパさんは本当に脳みそが好きだねえ」

アシリパ:「杉本はオソマ以外に何が好きだ?」

杉本:「食べ物?干し柿かなあ」

アシリパ:「なんだ?それ」

杉本:「そっか、北海道には柿の木がないんだっけ。食べると渋い柿の実を乾燥させたものさ。干すとすごく甘くなるんだ。もう何年も食べてないなあ。最後に食べたのは、戦争へ行く前だ」
アシリパ:「戦争から帰った時に食べなかったのか?」
杉本:「春だったからなかったんだよ」
アシリパ:「そうか。杉本も干し柿を食べたら、戦争へ行く前の杉本に戻れるのかなあ。全てが終わったら、杉本の故郷へ連れていけ。私も干し柿が食べてみたい。いいな、杉本」