デマ情報発信者は英語力が弱い

「感染症パニック」を防げ!  リスク・コミュニケーション入門 (光文社新書)

岩田健太郎『「感染症パニック」を防げ!――リスク・コミュニケーション入門』光文社新書、2014年より。

 

日本の医療者は、絶望的なまでに英語力が欠如しています。医師も、看護師も、その他多くの医療者も。(中略)これからは2ヵ月弱で医学知識が倍加する時代です。その情報の大多数は、英語による情報です。すなわち、英語ができないということは、どんどん倍増する医学知識に対するアクセスを全く持たないことを意味します。それは、医療・医学の世界から完全に取り残される、ということです。(p.238)

 

感染症のリスク・コミュニケーションを行なうためには、最新の情報収集が必須です。その情報源のほとんどは英語からなっています。英語力はリスク・コミュニケーターにとって必然です。英語を勉強するか、しないかという選択肢はここにはありません。英語は勉強するしかないのです。(p.240)

 

デマを発信する人は、英語力がとても弱いことが多いです。なので、元文献にあたることがなく、二次情報だけでものごとを判断しようとします。あるいは、元論文を読んでも中途半端な読みなので、(意図してか無意識かはともかく)自分の都合のよいように曲解します。(p.241)

 

 デマを発信する人には「ちゃんと元論文を読みましょう」とお薦めしますが、「そうですか」と言ってすぐに読む人は、皆無です。みな、自分の構築した知の世界に安住し、満足して、その外に出ることは絶対にありません。彼らは「井の中の蛙」なのです。

 自分の知識の限界を理解し、その外には自分の知らない世界がある、という自覚がある人は、そもそもデマ、流言は出さないものです。こう考えると、デマ、流言を出す人は(その知識の量に関係なく)「バカだ」と言い切ってもよいと思います。

 「自分は無知だ」という自覚だけが、本当の意味での「バカ」になることから自分を回避させてくれるのです。(p.241)