患者の病気についての個人情報保護は「知る権利」よりも価値が高い
岩田健太郎『「感染症パニック」を防げ!――リスク・コミュニケーション入門』光文社新書、2014年より。
医療機関の場合、個人情報の保護と情報公開のバランスは、いつも難しい問題です。
基本的に、個人を特定しうる情報は一切公表してはいけません。これが原則です。
メディアの中には、疾患を持つ個人を特定して発表することが、人の「知る権利」を守り、感染症のアウトブレイクも防止するのだという意見の人がいます。「知る権利」と「知られない権利」は等しく尊重されねばなりませんが、病人の、病気であるという個人情報は、「知る権利」よりも価値の高いものだと私は思います。(pp.154-155)
それに、患者の個人情報をメディアが明らかにしても、感染症流行を抑える効果はほとんどありません。そのような学術的な吟味もなしに、適当な正論めいた理屈でもって(本音は特ダネが欲しいだけなんです)、個人情報の公開を迫る態度はよろしくありません。
医療機関は毅然として、このような要求を拒否するべきなのです。(p.155)