情報発信の技術が稚拙な大学の講義
岩田健太郎『「感染症パニック」を防げ!――リスク・コミュニケーション入門』光文社新書、2014年より。
プレゼンテーションについては、最近はTEDなど、上手なプレゼンのひな形が出てきました。医療においては、ケアネットなど、エンターテインメント性を持った情報発信が見られるようになってきました(私もときどき出ています)。
逆に、学会や大学の講義を見ていると、情報発信の技術が稚拙なケースも少なくありません。専門用語の乱用、お尻を向けてレーザーポイントをぐるぐる回して、聞き取りづらいしゃべり方で、読めない小さい文字がぎっしりつまったパワーポイントを理解できないくらいのスピードでどんどん回しているレクチャーを見ると、かなりがっかりします。
プレゼンテーションの技術が進歩する一方で、プレゼン能力でも格差が生じてきているような気がします。(p.114)
リスク・コミュニケーションには、プロセス(やり方)が必要です。聞き手を巻き込んで、いっしょに参加している感覚を持ってもらい、「なぜ」の質問に答え、どうしてそうするのかを納得してもらったうえで行なわれるリスク・コミュニケーションは、とてもうまくいきます。
一方的に、上意下達で情報を流しても、人は納得せず、その推奨にも従わない可能性が高いです。知識だけではなく、感情面や価値観に配慮することも大切です。(pp.114-115)
「私はこんなに知っている、勉強している」ことを誇示することが、プレゼンテーションの目的ではないのですから(この手の失敗は本当によく見ます)。(p.119)