全く面識のない人への手紙がたどり着くまでに何人を介するか(世間は狭い=噂は広まりやすい)

グループ・ダイナミックス --集団と群集の心理学

釘原直樹『グループ・ダイナミックス――集団と群集の心理学』有斐閣、2011年より。

 

ミルグラムは、あらかじめ設定された目標人物と、2000km以上も遠く離れた、目標人物とはまったく面識がない人物(手紙の発信者)を、間に何人の知人を連鎖的につなぐことによって結合できるかを検証した。発信者には目標人物の名前とその個人的属性についての簡単な情報は与えるが、目標人物を個人的に知っているのでない限り、発信者が直接連絡することは許されていない。発信者は目標人物に少しでも近づくと思う人を自分の直接の知人の中から1人選んで、その知人に手紙を送る。それを受け取った知人は、また同じ手続きを繰り返す。そうすることによって最終的に目標人物に手紙が到達すれば、実験終了ということになる。実験の結果、平均仲介者数は5.2人となった。すなわちアメリカ社会の世間の広さはその程度であることが明らかになった。三隅・木下(1992)は、これと類似の手法を用いて実験を行っている。その結果、わが国の世間は平均7.2ステップであることがわかった。これらの研究が示唆するように、世間は思ったより狭く「悪事千里を走る」ことは不思議ではないのである。(p.124)