「わかってから書いてはならない。書かないとわからないからである」

最新版 大学生のためのレポート・論文術 (講談社現代新書)

小笠原喜康『最新版 大学生のためのレポート・論文術』講談社現代新書、2018年より。

 

 卒業論文は、ある意味で、小学校の「自由作文」よりはずっと簡単である。なのに少し突っ込んで調べていくと、急にわからなくなる。始める前にはわかっていたつもりが、少し知り始めると逆にわからなくなる。論文執筆は、矛盾した作業である。

 人と違うことをいわなくては論文にならない。だが、まったく違っても論文にならない。資料や文献をたくさん集めなくてはならない。だが、そのほとんどを捨てなくてはならない。わかってから書いてはならない。書かないとわからないからである。しかも書き終わって初めて、なにを書くべきだったのかわかる。頭脳作業であるはずなのに、知力ではなく体力を消耗する。なんともやっかいな作業である。(p.142)