自分は頑張っているという意識は自分も他人も疲れさせる(西部邁)

死生論

西部邁『死生論』ハルキ文庫、1997年より。

※強調・下線は引用者

生の活力を奮い起こしていると意識することが自分を疲れさせる因となる、ということに気づかないほど私は莫迦ではない。人のやみくもに頑張っている姿は、えてして、他人のみならず自己をも困憊に追いやるのであるだから私は、自分の頑張りをひややかに眺めるもう一つの眼が必要であると考えた。その最も簡便な方法は、自分の死について考えかつ書いてみること、もっとあっさりいえば、どう足掻いても自分なんぞに平凡に生きそして平凡に死ぬ以外の途は与えられていないのだと心底から自覚してかかることである本書は、その意味で、私の精神的健康法の産物である。(p.11)