フォーリン・アフェアーズ『ネオコンとアメリカ帝国の幻想』書評
ネオコンとアメリカ帝国の幻想 (フォーリン・アフェアーズ・コレクション 特別版)
- 作者: フォーリン・アフェアーズ・ジャパン
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社出版
- 発売日: 2003/07/16
- メディア: 単行本
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個別に論文を評価すると、まずハンチントンと前副大統領のアル・ゴアの論文はあまり読む価値がない。ブルックスとウォールフォースの「アメリカの覇権という現実を直視せよ」は、アメリカ人の自慰的な発想の例として、また反面教師として参考になろう。また、現大統領補佐官のコンドリーザ・ライスの論文は、恐ろしく視野が狭くて、うんざりするほど国益に執着する人間が、現在のアメリカ対外政策の構想・立案を担っているという事実を確認するために、目を通しておく価値があるだろう。
逆に、現アメリカ外交政策の明晰な分析として、ハーシュとアイケンベリーの論文は読み応えがある。前者はジャーナリストによる時事的な分析であり、後者は極めて優れた歴史的・理論的分析になっている。また、いくつか極論と思われるような箇所があるにも関わらず、現実的で説得力のある「安保理崩壊」論を展開するのが、フィリップ・ゴードンの論稿である。本書一冊を読むだけで、イラク戦争をめぐるアメリカ外交政策において何が問題なのか、他の諸国はそれにどう向き合えばいいのか、について多くの示唆が得られるという意味で、本書は大変貴重な一冊である。