人間はたやすく敵・味方という対立の構図を作る

ロボットからの倫理学入門

久木田水生・神崎宣次・佐々木拓『ロボットからの倫理学入門』名古屋大学出版会、2017年より。

 

近年の心理学などの分野で得られた知見が明らかにするところによれば、私たちの自然な認知と感情はたやすく敵と味方という対立の構図を作り、そして敵を警戒し憎悪するようにできています。そして一度そのような敵対関係が構築されれば、争いに備えること、そして場合によっては攻撃される前に攻撃を仕掛けることが「合理的」な選択になります。他方で敵対関係を信頼と友好の関係に変えていくのは容易ではありません。それは相手をよく知り尊重しようという意志と粘り強い交渉を必要とします。(p.164)