小野田博一『論理的に考える方法』(日本実業出版社、1998年)書評
- 作者: 小野田博一
- 出版社/メーカー: 日本実業出版社
- 発売日: 1998/07
- メディア: 単行本
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①結論を先に出してはいけない。
結論が先にあって、「それを支えるために理由を考える」のではいけない。
②「この考えは意見の異なる人に理解できるだろうか」と常に自問する。
何かを述べたり論じたりする時には、「意見が異なっている人に向かって述べているつもりで述べよう」(185頁)という意識を常に持たなくてはならない。言い換えるならば、相手に明言せずとも意図は伝わるとか、このことは詳しく述べずとも自明であるというふうに考えてはならない。曖昧な表現は避け、はっきりと述べるべし。
③論理的思考には、結論を説得力で支える根拠が不可欠。
要するに何を述べたいのかが分からない文章、ただ単に事実を羅列しているだけの文章には論理がない。それは「なぜそうなるのか」「なぜそうでなくてはいけないのか」という根拠の部分が欠落しているからである。
④根拠にはそれなりの量が必要。
帰納と同じく、根拠には量がなくてはならない。そうすることで、いろいろな角度から結論を支えることができるからである。しかし、「いろいろな角度から」の言葉で誤解して、「あれこれ余分なものを混ぜる」のはだめ。
⑤結論は具体的でなくてはならない。
結論として出した問題への解決策が抽象的なレベルで止まっていてはならない。「〜については、早急な解決が望まれる」という表現はその典型。このような表現は、問題の解決に全く貢献しない。説得力のある根拠を示したのち、具体的な結論を述べてこそ論理的な思考となる。
実際にまとめてみるとどれも当たり前のように感じるが、実際に自分が書いたものなどを振り返ってみると、本当にこれらのことを忠実に守っていただろうか。かなり心もとないというのが本音である。論理というのは何も知識や知性の所在を問うのではなく、むしろ論理に従って書いたり考えたりする方が楽なのだということをもっと実感すべきなのかも知れない。論理を無視すればかえって混乱し、自分が今何をやっているのか、なんでこういう結論になったのかが全くわからない、さらに悪いことにその結論がほとんど問題解決に寄与しない、という最悪の結果になってしまう。最初は億劫に感じられても、論理立てて思考することに慣れてしまうべきだろう。