千石保『日本の高校生』書評

久々に読んで腹の立つ本であった。途中で読むのをやめてしまったので、本当なら書評を書くべきではないのかも知れないが、何かの間違いで買ってしまう人もいるかも知れないので、参考情報として掲載しておく。この本は98年に出たものなので、出てからかなり経っていることは事実だが、それにしてもいまだに「個性を重視した教育を」と真顔で論じる専門家がいるとは信じられない。そういう主張がどれほど教育論議をゆがめてきたことか。「個性を強要する教育の弊害」など、この著者には到底思い及ばないことなのだろう。とにかく書いてあることの何もかもが内容が薄っぺらい。日本の教育現場とアメリカの教育現場をさも理解しているような書き方だが、おそらくこのレベルの内容では、特にアメリカの教育について書かれた英語の学術書はほとんど読んでないだろう。こんな重要なテーマなのに、薄っぺらい主観とあまり有意とは思えないいくつかの統計で早々と日米の教育制度に価値判断を下すとは、勇み足にも程がある。高校教育についての議論なら、和田秀樹の本のほうが数百倍面白い。とにかく、読んでもなんら意味のある知見の得られない本である。