SSR in Transforming Societies書評

Security Sector Reform in Transforming Societies: Croatia, Serbia and Montenegro

Security Sector Reform in Transforming Societies: Croatia, Serbia and Montenegro

クロアチアセルビア・モンテネグロにおける治安部門改革(Security Sector Reform: SSR)を(1)政治レベル、(2)組織レベル、(3)国際レベルに分けて分析した研究書。セルビア・モンテネグロとは対照的にSSRの成功例とされることの多いクロアチアが、国内政治においても国際環境においても(とりわけEUNATO加盟条件に親和性があったこと)、また歴史的な条件から見ても、いかに幸運な環境に置かれていたかがわかり、成功要因をそのまま他の事例に適用することはおそらく無理だろうと推測される。筆者が「特定の文脈を無視してSSRにおける規範的前提を不可避のものとして受け容れることはしない」と述べていることからもそれは言える。

政策的には、SSRという枠組でくくることで実務家どうしの横のつながりができ、情報交換や教訓の活用が可能になるという利点があるのかも知れないが、学術的には、どの規範を分析の中心にするのか(例えば「民主主義」規範と「法の支配」規範が衝突する局面のような場合)、改革対象の部門は何か(軍、警察、情報・司法機関、監視機構のどれなのか)、長いSSRの過程の中のどの活動を対象にするのか、などにおいてSSR研究はより詳細化の方向に向かう必要があるのではないかという気が本書を読んでした。