Andrew Wilder, Cops or Robbers?

Afghanistan Watch: "Cops or Robbers?" AREU's must-read report on police reform

 Afghanistan Research and Evaluation Unit(AREU)の報告シリーズで、アフガンの警察改革についてのもの。すでに出てから4年半が経っているので情報は少し古いかも知れないが、改革をめぐる問題の質に根本的な変化はない。2002年のG8で、治安部門改革(SSR)を5つの分野に分けて主導国の間で分担した「5つの柱」(米=国軍改革、独=警察改革、伊=司法改革、英=麻薬対策、日=DDR)を明確に失敗と評価し、より統合的なSSR戦略の必要性を唱えている。2005年からアフガン南部でタリバンが攻勢をかけて治安が悪化したため、南部で活動する米国が反乱鎮圧作戦(counterinsurgency)のために質よりも量を優先した警察改革を行い、長期的な文民警察の育成を目指していたドイツの警察改革とヴィジョンや活動内容において大きく矛盾するようになってしまった点が指摘されている(現在はEUのEUPOLがドイツの任務を吸収)。

 この分野の文献ではよく「アクター間の統合・連携・調整の必要性」が指摘されるが、概念的・抽象的な議論にとどまるものが少なくない。この報告書には現地での無数のインタビューや実地調査が盛りだくさんで、問題の本質をより具体的に理解できる。(例えば、米国の委託によりカブールの警察学校(Kabul Police Academy: KPA)で警察の訓練を行う民間安全保障会社のDynCorpは、すぐ隣接するところでドイツのPRTが行っている警察訓練の内容について全く知らず、ドイツ側もDynCorpの訓練について何も知らなかった、など。)司法改革についても問題点が具体的事例を伴って提示されている。

 脚注を見れば明らかなように、この報告書のために無数のインタビューが行われていて、警察官や内務省の役人の生々しい発言がそのまま引用されている。また、腐敗構造、女性警察官の不足、財政の健全性(賃金と階級制度に残る不公平)、徴兵・審査システムの機能不全、警察官の識字率の低さ、車や兵器など寄贈物資の規格の不統一など、現在も続いている深刻な問題を非常に多角的な視点から浮き彫りにしており、何が問題でその解決のために何をしなくてはならないのかが非常に明確に伝わるように書かれている。

 2005年のタリバン攻勢以来、国際社会による警察改革に対する財政的支援は激増した。この急増した予算を好機として警察の質の改革につなげようとする期待と、予算が増えたことをいいことに内務書の腐敗構造や訓練活動の質などより根本的な改革が後回しにされるのではないかという危機意識の両方が報告書に表れており、2002〜2007年における過去5年の警察改革の教訓を未来に活かそうとする姿勢を明確に示している。