英語教育原論

英語教育原論

英語教育原論

たまたま市立図書館の本棚で見かけた、寺島隆吉『英語教育原論』(明石書店、2007年)という本を読みました。いろいろなことが述べられていますが、核心は「小学校に英語を導入すべきか」というテーマです。著者は反対の立場を明確にしています。

自分も小学校英語には反対です。世間の親がメディアに踊らされてる典型例だと思う。この本の中で書かれているとおり、これ以上小学校の先生に負担を強いるのは無理だし、本当に英語教育を良いものにしたいのであれば、今ある中学・高校の英語教育制度を改革するほうがよほど現実的です。

この本の中で書かれていることで印象的だったことですが、職業訓練給付金の名目で社会人が英会話学校に通うのには補助金が出るのに、中高の英語教師が担当するクラスの人数を減らしたり長期休みに海外研修に行ったりするための予算は出てません。ネイティブ・スピーカーを中高の英語授業に、という名目で大学生や大卒まもないネイティブの若者を月30万の給料を払って連れてくるJETプログラムもいろいろ問題があると言われています。そのお金を日本の英語教師が自己研鑽するのに費やすほうが、学ぶ側の生徒たちにとってはよほど大きな影響をもちます。

(JETプログラムのルポについては、堀田佳男『どうしてYesも言えないの―アメリカ人が見た日本の学校現場』に詳しく書かれています。)

出版社や塾業界は新たな市場開拓に色めきたっているけど、教育の論理じゃなくて経済の論理がこの「早期英語教育の推進」という動きの背後にあるのは明らかで、このまま行けば膨大なお金をかけて何の効果も得られないという結果になります。

公立小学校での全国一律の英語教育はいらないと思います。