人間の思考は漂流しやすい

創造的論文の書き方

創造的論文の書き方

「面白いシンボリックな事実から出発して仮説を育てるプロセスで、色々と調べることに目を奪われて、本筋を外れて枝葉に入り込むことは、多くの人が犯す失敗である。」

「引き込み線に入らないためには、シンボリックな事実あるいは観察が与えてくれるイメージを、鮮明に具体的に描いておくこと、そしてそのイメージから絶対に目を離さないこと。目を離してしまうと、途中で調べた別のことのイメージに引きずられ、あるいは使っている言葉の連想ゲームでどこかへ飛んでいって、思考の筋道がずれていってしまう危険が大きくなる。」

「原点に鮮明なイメージがあり、それから絶対目を離さなければ、そうした間違いは起きにくい。そのイメージこそが原点・不動点である。それを説明するのだ、と強く意識することがあえて必要なのである。人間の思考は、それほど漂流しやすい。」

伊丹敬之『創造的論文の書き方』163-164頁。