人付き合いは「腹六分」でいい(美輪明宏)


朝日新聞1月26日付朝刊「悩みのるつぼ」、悩み相談に対する美輪明宏の回答より。

人間の付き合いというのは、「腹六分」がちょうどいい。いつまでも付き合える人は一生に何人も出てこない。親友なんて1人できればいい方で、助けが必要な時にはいつでも助けてあげて、普段は当たり障りのない距離で見守っている人のことでしょう。


「水臭いじゃないの」と何から何まで悩みも聞き、金も貸してくれる、そんな便利な人はいるはずがない。離れていく人は、ニセ者だから惜しむ必要はありません。本物は離れません。


昔、三島由紀夫さんが切腹事件を起こす直前のことです。私の楽屋を訪ねてきました。はっきりは言いませんでしたが、「最後のあいさつ」に来たことがそれとなくわかりましたから、「何で私たちは18年も付き合えたんでしょうね」と聞いたのです。すると三島さんは、「ひざの上に乗るからなでてやったら、図に乗って肩まで上ってくるやつがいる。しまいには頭に上って、顔までなめるやつがいる。キミにはそういうところが一切なかったからな」と言ったのです。


暮れと年始のあいさつに彼の家に行ったことがありましたが、彼が私の家に来たのは18年で2回だけ。横尾忠則さんや瀬戸内寂聴さんなど、今も親しくさせて頂いている方たちもみんなそうです。仲良しだけれども、つかず離れず、それが大人の関係というものでしょう。