恋愛市場価値

今日の岡田斗司夫の人生相談は傑作です。
若い世代の「生態」をよく観察しています。

相談者:主婦 50代

60歳手前の主婦です。大学進学で親から離れてかれこれ10年になる28歳の息子がいます。

昔から女の子にモテナイというか引っ込み思案でした。背格好は普通の、地味で目立たないいわゆるイケテナイ男子です。

私が知る限りでは、今まで彼女は一人もいません。大都会の企業で働いてはいますが、満足な給料はもらえていません。

息子の中学高校の同級生では親になった人も少なくありません。いまだ彼女もつくれない息子を見ると地団駄を踏みます。冗談でも本人や夫に聞けませんが、28歳でまだ童貞なのだろうか、性欲の処理はしているのかという余計な心配もします。

女性経験を持つと、おしゃれに目覚めたり、着る物や下着に気を使ったりするといいます。帰省する息子のダサい髪形と流行無視の格好は相変わらず。はき古したトランクスを洗濯するたび、この子の下着を洗ってくれる女の子は一生現れないのかと思い、情けなくなります。

陰で遊んでくれていたらとも思うようになりました。口下手で不器用な息子は今年のバレンタインもきっとチョコには縁遠かったでしょう。

女狂いの息子に困り果てている母親もいるでしょうが、私は逆で、せめて30歳までには人並みにチェリーボーイだけは卒業して欲しいと願っています。こんなことを思う母親って、私だけでしょうか。

回答者:評論家 岡田斗司夫

25〜30歳の女性を恋愛市場価値順に並べます。価値は100万〜0円としましょう。上位5%は「モテ」、次の25%は「まあモテ」、その下の60%は「モテるわけではない」で、最下層10%は「非モテ」です。

対する男性の25〜30歳を並べると100万〜マイナス100万円。注目すべきは最安値で、男性は0円ではなくマイナスです。分布も女性とは違い、上位5%は「モテ」、次の35%は「モテるわけではない」、その下の50%は「非モテ」で、最下層の10%は「キモチワルイ」です。

あなたの息子は第3層「非モテ」男子です。おそらく市場価値はマイナス30万ぐらい。オシャレや髪型に気を使うと、なんとか0円にまで市場価値を上げられるかも。対人関係を「積極的に・明るく」と切り替えれば、なんとか第2層の「モテるわけではない」の市場価値20万円クラスにいけるかも。

つまり、あなたが考えてる程度の頑張りを息子が全部やっても、市場価値は0円。ほとんど人格改造レベルに近い努力をしても20万円です。

同世代女性の「全然モテない」人とやっと釣り合いが取れる。これじゃ恋愛なんてするだけ損。彼女つくる気が起きないに決まってます。

息子がかわいそう?じゃあ仮にあなたがいま、25歳の普通の女性だったら、どんな人と付き合いますか?

さっぱりした外見で、自分を好きだと積極的に言ってくれる。ワガママを許す優しさも頼りがいもある。イケメンでなくても付き合ってみようかな。上を見てもキリがないし。「中身がいいんだよ」って友達に紹介できるし・・・・・・これが「性格の良い女子」の考え方です。わかりますよね?

そしてこれらの条件を満たす男子は市場価値50〜60万円クラス、上位10〜20%の優良物件です。「男性の外見を気にしない性格の良いお嬢さん」の視界にすら入らないんですよ。「非モテ」男性は。

ではどうするか?ほっといてあげましょう。非モテ30歳でも5年待つと、同年代女性の恋愛市場価値が暴落します。女性はマイナスにはなりませんが、15〜20万程度の値頃な物件になって、そこらにゴロゴロ転がってます。

その時にこそ、息子が自分磨きをして恋愛市場価値を20万ぐらいに上げていれば、彼女ができるかもしれません。

とりあえずそれまでほっといてあげてください。「お年頃女子の心を忘れているママ」へのお願いです。

(2011年4月9日 朝日新聞「悩みのるつぼ」より)